ねじりまんぽは流線を帯びた美しい煉瓦の積み方です。可塑性に優れ、煉瓦の欠点を克服したコンクリートをふんだんに使用した千代ヶ崎砲台跡に、どうしてねじりまんぽが採用されたのか、このことが不思議でなりませんでした。
私は千代ヶ崎砲台跡サポーターの会のガイドの卵です。お客さまに千代ヶ崎砲台跡を理解していただく意味でも、私なりにこの不思議の謎を解き明かそうと思いました。
◆「ねじりまんぽ」とは
私にとって、まず、ねじりまんぽとは何か? を理解する必要がありました。参考文献を紐解くと、ねじりまんぽとは通称の呼び名であることわかりました。平たく言えば、「ねじりが入ったトンネル」の意味合いです。正式な呼び名は、「斜架拱(しゃかきょう)」とか「斜拱渠(しゃきょうきょ)」と言います。
このねじりまんぽは、煉瓦組積(そせき)工法の一つで、具体的にはアーチ構造物の上部を通過する鉄道線路と、その下をくぐる河川や道路等との交差角が直角以外の角度で交わっているような場合に使われる工法です(写真1)。
下になるアーチ構造は、上を通過する列車の重みに耐えられる応力の確保が必要になります。一般的に、交差角が直角であれば、床面に対して水平に積んでいく通常の煉瓦組積工法で、充分に応力が確保できます。
一方、斜めに交差する場合はそれができず、目地の部分から割れてしまう可能性があります。そこで、なるべく広い範囲で(とくに上部との接続面で)直角に近い角度で交差できるよう、煉瓦を一定の角度でねじらせて積む工法が考案されました。これが、ねじりまんぽです。
専門用語で交差角のことを斜架角(しゃかかく)と言います。そして、煉瓦をねじる角度を起拱角(ききょうかく)と言います(写真2)。斜架角と起拱角を足して「90°」になれば、理論的には水平積みと同程度の応力が確保できることになります。
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外川昌宏 (月曜日, 24 1月 2022 09:16)
千代ヶ崎砲台跡の不思議な「ねじりまんぽ」を興味深く読ませていただきました。
今回の「千代ヶ崎砲台跡の不思議な ねじりまんぽ」で、実に正確に計算され強度がしっかり保たれていることが理解できました。改めて素晴らしい技術だと感服した次第です。
さて、その上で、「千代ヶ崎砲台跡のねじりまんぽ」の不思議についてです。
竹崎さんによれば、天井がコンクリート構造であり、わざわざ「ねじりまんぽ」にする必要性があまりないということです。しかし、この工法を採用したのは、「美しさ」を表現したかったのではないかという意見に、私も同じ考えを持ちました。
ではなぜ、軍事施設である千代ケ崎砲台に「美しさ」が必要だったのでしょうか。
私は、明治の人の「ゆとり」と新しい日本を創造していく「気概」を強く感じます。
美しく、文化的な中にも機能的で先進的な砲台を作ることにより、日本の近代化を目指す意志と共に、千代ヶ崎砲台をとても大切に扱っていこうとする当時の人の思いも伝わります。
そのようなことを考えながら千代ヶ崎砲台跡を歩くと、今までこの砲台を様々な使命と共に大切にしてきた多くの方々の思いと、千代ヶ崎砲台跡が国の史跡として公開された意義を伝えていく重要さを強く感じています。
小曽戸 聡 (月曜日, 24 1月 2022 10:19)
大変興味深い内容で、一気に読ませていただきました。士魂洋才のような、明治初期の雰囲気が感じられる遺構なのだと、改めて強く感じました。