千代ヶ崎砲台跡でのガイドツアーについて

(撮影:筆者)
(撮影:筆者)

1 はじめに

 
私は令和4年(2022年)4月に横須賀市教育委員会教育総務部生涯学習課(以下、当課)に異動してきました。私が当課に異動してきてから今日まで、まだまだ約2か月弱と短い時間ではありますが、ガイド(以下、サポーター)の方々と関わる中で感じたことをお話ししたいと思います。
 

2 千代ヶ崎砲台跡のサポーターとは

 
国史跡東京湾要塞跡千代ヶ崎砲台跡(以下、千代ヶ崎砲台跡)は、明治時代に東京湾要塞を構成した砲台のひとつです。江戸時代後期に会津藩により台場が造られた平根山に、明治25(1892)年から明治28(1895)年にかけて陸軍によって建設されました。
 
築城当初の姿を良好に残し、近代日本の軍事および築城技術の様相を具体的に理解することができるため、猿島砲台跡と合わせて、平成27(2015)年3月に、近代の軍事施設に関する遺跡としては日本で初めて国史跡の指定を受けました(詳細は横須賀市のWebページをご覧ください)。
 
現在は、当課が千代ヶ崎砲台跡の保存活用事業を行っています。そして、千代ヶ崎砲台跡は令和3(2021)年10月23日から土曜日・日曜日・祝日に一般公開しています。公開にあたっては、当課が事務局となるボランティアガイド「千代ヶ崎砲台跡活用サポーターの会」(以下、サポーターの会)が現地で活動しています。

 

(撮影:筆者)
(撮影:筆者)
それでは、千代ヶ崎砲台跡のサポーターとは、一体どのような方々なのでしょうか令和2(2020)年に、現地で解説を行うガイドや管理運営を担う人材の育成を目的として、(公財)横須賀市生涯学習財団と横須賀市教育委員会の共催で「千代ヶ崎砲台跡活用ボランティア養成講座」を開催しました。この講座を受講し、講義や現地実習、研修会により学ばれた方々が、サポーターの会の会員となり、現在、サポーターとして千代ヶ崎砲台跡で活躍しています。
 
サポーターは、平日は仕事をされている方、定年退職されて第2の人生を歩んでいる方など様々です。NPO法人横須賀シティガイド協会や、猿島公園専門ガイド協会などに所属し、千代ヶ崎砲台跡以外でもガイドとして活躍している方もいます。お子さんやお孫さんがいらっしゃる方もいます。横須賀で生まれ育った方もいれば、横須賀に越してきた方もいます。立場は様々ですが、共通して言えることは、みなさん、千代ヶ崎砲台跡をはじめ横須賀がとても好きで、横須賀の魅力をたくさんの人に知ってもらいたいという熱い思いを持っているということです。

 

(撮影:筆者)
(撮影:筆者)

 

3 サポーターの活動について

 
では、サポーターは現地ではどのように活動しているのでしょうか。サポーターの朝はとても早いです。千代ヶ崎砲台跡までの急な坂道を登り、9時30分の公開開始に間に合うように準備をします。受付を設置したり通路にライトを設営したり、雨の次の日は特に危険な場所がないか点検したりします。屋外にあるため、その日の天候によって臨機応変に動きます。
 
準備が整ったら、見学者を迎えます。千代ヶ崎砲台跡には、サポーターと一緒でなければ入ることができない所もあります。そのため、見学者がいらっしゃったら、まずガイドツアーに参加するかどうかを尋ねます。そうして、サポーターによる約50分前後(時間はあくまで目安です)のガイドツアーが始まります。もちろん、ガイドツアーに参加しなくても十分見学できますが、初めて訪れる方は参加される場合が多いです。リピーターの方は参加される場合もあれば参加せず見たい所をじっくり見られる場合もあります。
 
サポーターとして活動する動機も様々です。千代ヶ崎砲台跡をはじめ横須賀が好きな方、人と話すのが好きな方、人に何かを伝えたり教えたりすることが好きな方、サポーターとして地域に貢献したい方など、勉強家で向上心があり、個性豊かで熱心な方々です。解説の仕方も人それぞれで、見学者に分かりやすく説明するために、独自に資料を作ったり、模型を作ったりする方もいます。見学者を楽しませるだけでなく、サポーター自身も楽しみながら解説をしているようです。
 
また、サポーターの活動ペースに決まりはありませんが、月に1回~4回活動する方が多いです。そのため、リピーターの見学者には、おそらく前回とは異なるサポーターが、まだまだ知らない千代ヶ崎砲台跡の魅力をたくさんお伝えします。サポーターが違えば、千代ヶ崎砲台跡の見え方も違ってくるかもしれません。
 
一方、千代ヶ崎砲台跡を訪れる見学者も様々です。老若男女、市内市外問わず、たくさんの方が訪れてくれます。そのため、当課が作成したガイドツアーの教本はありますが、ただマニュアル通りに案内するのではなく、見学者に合わせて話す内容や話すスピード、話し方、歩くスピードを変えています。足の悪い方を案内する時は、特にゆっくり歩き、階段の上り下りでは優しく声をかけます。こども連れの方には、こどもにも伝わるように、言葉をかみ砕いたり、分かりやすいエピソードを用いたりして話します。

 

 

4 さいごに

 
千代ヶ崎砲台跡を後世に残していくために、今なにができるのでしょうか。何かを伝えようとする、人から人への思いの力はとても大きいものです。私は、サポーターとは、千代ヶ崎砲台跡の魅力を、良さを、見学者をはじめたくさんの方に伝える人たちだと思います。サポーターのその思いの力が、巡り巡って、千代ヶ崎砲台跡を後世に残していくための力に繋がっていっていくのではないでしょうか。
 
千代ヶ崎砲台跡は、一般公開がはじまってからまだ1年も経っていません。サポーターも千代ヶ崎砲台跡もこれからどんどん成長していくことでしょう。見学者との出会いを大切にしながら、これからも、千代ヶ崎砲台跡のサポーターとして、千代ヶ崎砲台跡の良さを、魅力を、思う存分引き出していって欲しいと思っています。
 
千代ヶ崎砲台跡を訪れたことがない方も、行ったことがある方も、ぜひ足を運んでみてください。ガイドツアーに参加しなくても、史跡内には見どころがたくさんあります。けれども、お時間がある方はぜひぜひガイドツアーにご参加ください。千代ヶ崎砲台跡の魅力を一生懸命お伝えします。交通の便は悪いですが、横須賀にある史跡のひとつとして、たくさんの方に知っていただければ幸いです。千代ヶ崎砲台跡の魅力を最大限に引き出すサポーターの方々がお待ちしております。